【お年魂】


 時は
2000年を迎えた。

みんなの心は弾んだのだろうか?

 山の奥深くに、負けイヌのように暮らす青年が独りいた。

彼は、この時を歓迎してはいなかった。

まだ、彼の中にはなにも変っていない事があった。

まだ、彼の中ではなにも解決はしていなかった。

 でも、時は残酷にも待ってはくれない・・・。

彼もその事は知っていたが、なにも進めないでいた。

 

 ある夜の事、いつものように眠れないでいる彼がそこにいた。

時間は3時頃であったろうか、窓の外を眩しい何かが光った。

 「山のほうだ・・・」

彼は驚く様子もなく、ポツリと呟いた。

やがて、その光は、山のふもとの彼の家に近づいて来た。

そして、その光は彼の家を包みこんだ・・・。

 彼は、外に出た。そこには、なんと神様が立っていた。

もちろん、神様なんて初めて見る。だが、彼は、なんの迷いもなく

゛神゛と知った。

 神様は彼に微笑んだ。彼はなんともいえない感じにつつまれた。

「腹だ腹の中。俺の生まれる前、子宮の中みたいだ・・・」

また、彼は呟いた。しかし、さっきの呟きとは違い、今、彼は

にこやかに微笑んでいる。幸せそうに微笑んでいる。

 そして神様は彼に言った

「お前にこれをあげよう、大事に磨けば、それはきっとお前のモノになる」

 そう言って神様は、彼に一つの゛丸い石゛を差し出した。

その石は、赤黒く、どちらかと言えば不気味な感じのする石だ。

彼は、その両手一杯くらいの石を受け取った。

「お年魂だ」

神様は、そう言った。言ったと同時ぐらいに神様はまた、光となり、山へと

帰って行った。

 

 「夢か・・・」

彼が目覚めたのは昼になりかけた朝だった。

彼の部屋の窓からは、冬とは思えないほどの暑い陽が差し込んでいた。

「・・・」

彼は見つめた。彼の枕もとにある、赤黒い石を・・・。

彼はその石を持ち、その石にかるく、口付けをした・・・。

彼は何を思い、何を磨くのだろうか・・・。